【ベトナムのキャッシュレス事情】コード決済がベトナムで急増。街の声は賛否分かれる
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ベトナムはキャッシュレスでも「新興国」。クレカvsコード決済
目をみはるほどの経済成長を遂げるベトナム、コード決済も爆発的に人気が出ています。理由は「圧倒的に手軽で信頼度が高い」こと。インフレが続くベトナムでは紙幣の価値が低く、買い物をするためには多くの紙幣を持ち歩かなければいけません。その点キャッシュレス決済を利用していると、紙幣を持ち歩く必要がない上に簡単に支払うことができます。ベトナムで人気が出るのも頷けますね。
ベトナムでは国を挙げてキャッシュレス化を進めており、街中にはコード決済サービスの広告があふれています。例えば街中の石のベンチ。VNPAYのロゴの横に、VNPAYを即座に始めることができるリンクのQRコードが貼り付けてあります。石に直接掘っているQRコードですが、意外や意外これでもしっかり読み取れます。
このベンチはベトナムの中部・ダナン市の海岸線の道路に沿って等間隔で置かれています。道行く人や車、バイクに乗る人が、気軽にアクセスできるようにとの計らいです。実際に筆者自身も興味本位でQRコードを読み取ってみました。全てベトナム語だったので結局ダウンロードにまでは至りませんでしたが、日本ではみないような宣伝の形がユニークですね。
石のベンチのQRコードを読み取るとこのような画面に飛びます。かなりポップな仕様で「ちょっと試してみようかな」と思わせるデザインですね。
ユニークな形でベトナム社会に浸透するコード決済、実情はどうなっているのでしょうか。また、コード決済を利用する人の生の声もご紹介します。
コード決済(e-wallet)は20種類も!?簡単な決済がより人気に!
ベトナム政府の調べによると、ベトナム社会における現行(2016年)の現金使用率は90%にも上ります。政府は、この高い現金使用率を2020年までに10%以下にまで引き下げることを目標とし、キャッシュレス化に大々的に乗り出す方針です。ところが、ベトナムのキャッシュレス化は思うように進んではいません。
ベトナムの経済産業省の調べによると、成人の30%が銀行口座を保有しています。銀行口座があれば、様々なキャッシュレス決済サービスを利用することができますが、多くの人がそれでも現金を好んで利用しています。(引用:HANOITIMES)
多くの方が現金を触れる感触や目で見て支払い状況を確認できることを好み、小売業者の方でもインセンティブのないキャッシュレス決済を導入することに消極的です。
Vietcombankのダオ・ミン・チュアン部長代理によると、「キャッシュレス決済を利用することに対するインセンティブを税金制度に還元することで、ビジネスへの導入が進むのは自明だ」とし、キャッシュレス化への社会的対策が必要との見解を明らかにしています。(引用:Vietnam News)
ベトナム社会のキャッシュレス化が進まない中、その現状に風穴を開ける存在が登場しました。それが、「コード決済」です。スマートフォンの普及率は2017年には84%に上り、多くの方がコード決済を利用できることがわかります。(引用:Vietnam News 2017)
ベトナムではコード決済を含むe-walletは20種類以上存在します。2017年のSBV(The State Bank of Vietnam)の調査によると、e-walletを用いた取引(決済)は1年で22億ドル(53 trillion VND)にも上ると言います。ベトナムの2017年のGDP、2,230億ドルを考えると多くはありませんが、ベトナムの現金普及率の高さと比べると、これからの普及の伸びに注目できそうです。
昨今急激に利用が増えているコード決済ですが、人気の秘訣は「圧倒的に手軽で信頼度が高い」ことです。ベトナムの通貨はドンと言います。1円が約200ドンと同等の価値があります。インフレの影響で紙幣の価値がかなり落ち込んでおり、少額のものを買うのにも多くの紙幣が必要なのです。最大額の紙幣は50万ドン。途方も無い額に思えますが、実は約2,500円にしか相当しません。高額なものを買おうと思うと札束を持ち歩かなければならないのです。安全面でも利便性の面でも不都合ですよね。
さらに、紙幣には偽札の問題もあります。ベトナムでは偽札が広く出回っており、高額な買い物では特に偽札チェックが入ります。手間も時間もかかるため、より簡単に支払えるのであればそちらを使いたくなるようです。
コード決済利用を促進しているもう一つの原因は、昨今普及が進むスマートフォンです。前述の通りスマホ普及率が高いため、より多くの人がコード決済を利用しやすい環境にいることがわかります。(引用:Vietnam News 2017)スマートフォン内に専用のアプリをダウンロードし、バーコードを表示/読み取りを行って支払うコード決済、「スマホネイティブ」の若者を中心に利用が広がっています。
ベトナムで利用されている主なコード決済サービス
ベトナムで利用されている主なコード決済サービスは、VNPAYやZaloPay、Onepay、Payoo、mPay、WePay、ViettelPayなどがあります。実際に街のお店では以下の写真のように宣伝されています。このスティッカーが貼ってあるお店ではVNPAYを利用することができます。
スティッカー上のQRコードを読み取り各種設定をすませると、その場で自分のスマホでVNPAYを利用することができるため、利用者数が増えているようです。
また、ベトナムでは、タクシーサービス「Grab」が流行っています。Uberと同様のサービスで、スマホを通じてタクシーを手配し、決済もGrabのアプリ内で完了する完全オンライン型システムです。現在では、このGrabが電子マネーとして新たな機能を取り入れています。タクシーを手配する際以外にも、街のお店で電子マネーとして支払いに利用できるようになりました。Grabでは、利用すればするほどお得になるシステムが用意されており、街中で利用しやすいサービスに成長しています。
実は進まないクレカ普及率、原因は信頼度の低さ
コード決済サービスが急激に普及している一方で、目立つのがクレジットカードの普及率の低さです。2017年の世界銀行の調査によると、ベトナムにおけるクレジットカード普及率はたったの4.12%です。周辺のASEAN諸国に比べてもフィリピン・インドネシアと並んで低くなっています。(引用:HANOITIMES)
進まないクレジットカードの普及は、銀行口座保有率の低さが起因しています。ベトナムの成人の銀行口座保有率は31%に止まっており、カードに紐づける銀行口座がないことがそもそもの原因です。ベトナム政府は銀行口座の開設を促し、キャッシュレス化を促進させる計画です。
銀行口座を開設していないことは、「社会的信頼」を損ねている原因でもあります。クレジットカードを利用するためには、その「社会的信頼」を担保することが必要です。現金優位社会で「社会的信頼」を作るのは難しいため、クレジットカードの普及が進まなくなっています。
今後GDPが増えていくにつれて、管理する資産も増えていきます。そうすると、銀行口座の保有率も上がり、「社会的信頼」が上がる見込みです。
ベトナムでの街の人の声は・・・?
急激に利用が伸びているコード決済サービスですが、ベトナム社会ではどのような評価を受けているのでしょうか。実際に利用している人々に聞いてみました。
コード決済を含めたスマホ決済を利用している人
クレジットカード以外のキャッシュレス決済を利用する人は、若者が中心です。ホーチミン市で外資系企業に勤めるLさんは、ZaloPayを活用する友達がいるといいます。「VNG(ZaloPayの親会社)に勤める彼女は、同僚と送金し合うときに利用するらしい。送金手数料がかからないから使いやすいって」と話し、彼女自らもMomoを利用するといいます。
「キャッシュレスのいいところはキャンペーンが多く少し安くなるところ。だけど利用していると広告が多かったり、使えるはずのお店で使えないことがよくある。不便な点もかなり多く、私の友達の間でも不満は結構聞く」と話します。
コード決済等を利用している人は多くても、改善点はたくさんみられるようです。
コード決済を利用しない人
一方で利用しないと言う人の間では、このような意見もありました。同じくホーチミン市で会社員を務めるYさんは、「僕は現金派なんだ」といいます。「キャッシュレス決済を利用すると、自分の消費傾向がビックデータとして知られてしまうでしょ。そういうデータは政府が全て管理できる。僕は政府に消費傾向を知られたくないんだ」とい言います。
ベトナムの政治は社会主義体制です。
民主主義国家よりも当局の監視が厳しいため、自分の情報を不用意に流すことに抵抗があるようです。
利便性を求める若い世代と、自分の情報を守ることを最優先にする中堅世代、乖離があるようですね。これから若い世代が最も収入を得る人口になってくることを考えれば、キャッシュレス決済はこれからも普及する可能性があります。今後も注目ですね。
この記事のライター:Maya Shinoda / ポモチ専属ライター
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