【エストニアのキャッシュレス化】一人あたりキャッシュレス決済使用回数は1年で331回!
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他国とは一線を画す、小国エストニアで進むキャッシュレス化
ヨーロッパの北東に位置するバルト三国のうちの一つ、エストニア。実は人口130万人のこの小さな国が近年、目覚ましいIT化で注目を集めています。エストニアでは、民間人の間だけでなく、決済の世界にまでIT化が急速に浸透しています。よりスムーズな取引を求めてキャッシュレス化が加速しています。
日本では「個人の支払い方法がどれだけキャッシュレス化するか」ということが注目されていますが、エストニアはその段階は通り越し、ビジネスの世界での効率化に着手しているのです。大胆な改革を国単位で行ったエストニアを例に、日本がこれからどのようにキャッシュレスシステムを活用できるか検証します。
ビジネスベースのキャッシュレス化が進むエストニア
人口130万人のヨーロッパの小国、エストニアはバルト三国のうちの一つです。あまり日本では知名度は高くありませんが、実は先期のEU(ヨーロッパ連合)議長国を務めたほどの国なのです。そんなエストニアでは、他国に例を見ないITによる制度改革が進んでいます。
国民の間でのキャッシュレス化はもちろん国を挙げて力を入れているのが、ビジネスにおける銀行間取引等の効率化です。エストニアでは、各国の銀行からの融資を誘致し、エストニアを国際ビジネスの起点にする計画が進んでいます。そのための手段としてエストニア政府が有力視しているのが、IT技術を用いたキャッシュレス取引のスピードアップです。
エストニアでは、世界中からのビジネスを誘致するために、e-residency (e住民権)という制度をスタートさせています。e-residencyとは、エストニアの土地に住んでいなくても、エストニアの市民権を得ることができる制度です。この制度では、世界中のどこにいてもEUに属するエストニアの市民権を得ることができ、EU諸国を相手にしたビジネスを計画している企業にとっては願ってもない制度です。エストニアのキャッシュレス化は、このe-residencyを促進させるための重要メソッドとして捕らえられています。
e-residency(e住民権)の促進
前述の通り、e-residency(e住民権)では外国企業や法人がヨーロッパ圏内でビジネスを進めやすくすることを狙った制度です。現在では27,000人を超える応募があり、140を超える国々から4,272社がe-residencyを求めています(参照:Futurism)。このように、広くその有用性が評価されているエストニアのe-residencyですが、エストニア政府はさらに利便性を高めたい狙いがあります。そのために鍵になるのが、資金運用の簡略化と、資金流動性の確保です。
そこでエストニア政府が目をつけたのが、政府運営暗号通貨「Estcoin」です。これは、性質はビットコインのような仮想通貨と同じですが、エストニア政府が管理する公的なキャッシュレスメソッドです。エストニアでは、元より国民の中からも「資産運用や資産転用をより簡単に早くできるようにしてほしい」との声がありました(参照:err)。それらの要望を受け、さらなる資金の有用性を高めるために、SEB(エストニア国立銀行)が中心となって開発した新システムとなります。
このシステムを利用すると海外にいながらもエストニアに籍を置く企業を運営できる上、資金運用も遠隔で容易に行うことが可能になりました。エストニア政府としては、エストニアを中心とするマーケットに、常にお金が回るシステムを作ることに成功したことになります。
さらに、より簡単で迅速な他銀行間取引のシステムを待ち望んでいたエストニア国民にも、もちろん恩恵が準備されています。(参照:Eesti pank)。このEstcoinを巡る銀行間の提携で、ほぼ全ての銀行間取引が手続き開始から完了まで、約5分以内に完了するようになったのです。この影響で、エストニア国内におけるキャッシュレス決済使用率は60%をゆうに超え、そのうち80%以上がデビットカードを用いた取引になっています(参照:CashEssential)。利用したその瞬間に利用分が引き落とされるデビットカードは、使いすぎを防止することも利点ですが、支払い状況が迅速に口座に反映されることが特徴です。何よりも、早い取引と迅速な反映を求めるエストニア国民には最適なサービスというわけです。
EUの中でもエストニアはIT化先進国
キャッシュレス化が全体的に進んでいるヨーロッパには、エストニア以外にも多くの国が数多くのIT先進国があります。ところが、その中でもエストニアは突出しているのです。本サイトではスウェーデンの例をご紹介しましたが、エストニアも負けず劣らずのIT大国で、キャッシュレス化が進んでいます。(スウェーデンの記事は本ページ下部より)
2015年の調査では、エストニア人一人におけるキャッシュレス決済使用回数は、1年で331回にも上ります。これは、EU内での平均、220回を大きく上回る数値です(参照:Eesti Pank)。主な決済方法としては、クレジットカードやデビットカードはもちろん、スマホ決済や銀行カードなどの様々な方法があります。特に多いのはクレジットカードやデビットカードでの支払いです。特にデビットカードの支払いが多く、できるだけ早く決済結果がわかる特徴が好まれているようです。
さらに簡単な支払い方法を求めて
とにかく簡単で迅速な支払いを好むのがエストニア人です。さらに簡単な支払い方法を求めて、エストニアではより便利な支払い方法が姿を現しました。カードを用いたキャシュレス決済が社会に浸透している中、新たに登場したのが、非接触カード決済です。従来のクレジットカードやデビットカードで支払いをするためには、専用の機械にカードを挿入するか、スライドさせて読み込む方法が主流でした。これでも十分手軽に決済できるのですが、非接触カードを用いると、機械にカードをかざすだけで決済が完了するのです。
この機能を用いると、両手がふさがっている状態でも簡単に支払いを済ませることができます。日本でもプリペイド式ICカードが普及していますが、同じような感覚です。クレジットカードやデビットカードに非接触用ICチップが搭載されているため、毎回カードにチャージをすることなく簡単に支払いができるのです。2017年現在では、エストニアで使われている全てのクレジットカードのうち、17%が非接触型決済が可能です。全体の数からみるとそれほど多くありませんが、これから急激に伸びることが予測されます。
この非接触型カードは、エストニア以外のヨーロッパ諸国でも普及しています。特に中欧のチェコ共和国やスロバキア共和国で多く使われ、ほぼ全ての銀行が発行するカードに非接触機能が付帯しています。より簡単に決済をしたい、と考えている人がとても多いことがわかります。また、日本でも少しずつ同様のカード(suicaやICOCAなどの交通用ICカード)が普及しています。これからさらに日本でのキャッシュレス決済の形に多様性が生まれそうですね。
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そもそもどうしてエストニアはキャッシュレス化に力を入れている?
エストニアがe-residencyというシステムを作り上げ、キャッシュレス化と結びつけることで資金の動かしやすいシステムを整備したのには理由があります。エストニアという国は、ラトビアとロシアの2カ国と陸続き、そしてバルト海を挟んでフィンランドとスウェーデンとの国境を持つ国です。大国に囲まれて、地政学的にはとても不利な状況にあるのです。そのため、バルト三国の内の一国として、存在感を強めようと試行錯誤を繰り返してきました。20世紀の中頃から終盤にかけて、当時のソビエト連邦の一部として主権が認められていなかったことも、エストニアの政策理由です。
1991年、ソビエト連邦の崩壊とともに主権を取り戻し、独立国家となったエストニアですが、地政学的に不利な事実はそう簡単には変わりません。もう二度と隣の大国に支配されないために、二度と主権を失わないために、独立国家としての存在感を国際社会に示すことが国策になりました。独立当初からITに目をつけたのはそのためです。
国の陸地面積は小さく、人口も他の大国には遠く及ばない、そんな小国が力をつけるために選んだ方法が、クラウド上での主導権を握ることだったのです。国土が小さいからといって、国民の数はそれに比例するわけではありません。当時、長らく常識だった「国土が大きな国は大きな人口を有し、国際社会において優位」という事実をひっくり返した結果になります。
「二度と主権を失いたくない」「二度と自分たちの国を失いたくない」そのような思いから、EU市場にもアクセスがあるエストニアの利点を生かしたe-residencyの政策が生まれたのです。このe-residencyの充実を支えるのが、ITを巧みに利用し、キャッシュレス化した資金運用システムです。より簡単に、そして遠隔でも操作できるようにと導入されたシステムの一つ一つが、エストニアの国際社会での立場を支えていることが明らかになりました。
エストニアの例を見ていると、日本も他人事ではないことがわかります。人口減少、少子高齢化、ブレインドレインなど、日本の国力を脅かす現状はすでに存在し、懸念は大きくなるばかりです。外国人労働者の受け入れを拡大し、労働力の補填にあてる政策がとられていますが、たくさんの課題が未解決のまま山積しています。着眼点をかえ、IT技術を上手く利用することで、エストニアのように一定の改善をみることができます。支払いや資金運用のキャッシュレス化は、既存の問題解決の大きな可能性を持っているのではないでしょうか。
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この記事のライター:Maya Shinoda / ポモチ専属ライター
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